第8巻第2号 目次
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論文
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採録論文数と被引用回数による社会科学分野のコア・ジャーナルの 特定について 王 杰・岸田和明・松井幸子
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多変量正規混合分布モデルに基づく分類法 中村永友
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初期値指定クラスター分析 谷口 るり子
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非対称データに潜む順序構造の探索 中島 晃・齋藤尭幸
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総合報告
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インターネットへの参加 -- jscs.or.jp運用を通じて -- 南 弘征・水田正弘・佐藤義治
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ソフトウェア記事
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正準相関分析と回帰分析変数選択基準を用いた判別分析変数選択の試み -- S の活用
-- 上田太一郎
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統計入門ソフトフェア StatPartner 吉田典弘・石橋雄一
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学会活動記事
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第9回日本計算機統計学会大会報告 志村健一
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欧文誌掲載論文概要: J. Japanese Soc. Comp. Statist., 7(1), 1994 大西治男・上坂浩之
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関連学会記事
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ICSQP'95 参加報告 宿久 洋
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読者の広場
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私の勤めている大学 種市信裕
採録論文数と被引用回数による社会科学分野のコア・ジャーナルの特定について
王 杰:(財) 流通システム開発センター情報システム部
〒141 東京都品川区西五反田 7-23-1 (Tel. 03-3494-4076)
岸田和明:駿河台大学文化情報学部
〒357 埼玉県飯能市阿須 698 (Tel. 0429-74-7124)
松井幸子:図書館情報大学図書館情報学部
〒305 茨城県つくば市春日1-2 (Tel. 0298-52-0511)
本研究では, 採録論文数と被引用回数という2つの尺度によって, 社会科学分野における重要な雑誌群である「コア・ジャーナル」を特定するための実験を行った. 研究の素材としては, International Bibliography of the Social Sciences (IBSS)および Social Science Citation Index(SSCI) を使用した. その結果, 経済学, 政治学, 社会学, 社会人類学・文化人類学の分野別に, IBSS と SSCI の両者に採録されており, 採録論文数とインパクト・ファクタ(被引用回数を掲載論文数で補正)の両者あるいはいずれかでコア・ジャーナルとなる雑誌群や, いずれかのコア・ジャーナルではあるが他方には採録されていない雑誌群など, 5つの特徴ある雑誌群からなるコア・ジャーナルを特定した. さらに上記の4分野には含まれないが, 社会科学分野全体ではコア・ジャーナルとなる学際性の高い雑誌群も見出した. 最後に, 得られたコア・ジャーナル・リストの利用方法について検討した.
keyword{Subject bibliography, Citation index, Bibliometrics, Social science research, Library collection management}
多変量正規混合分布モデルに基づく分類法
中村永友:総合研究大学院大学 統計科学専攻
〒106 東京都港区南麻布 4-6-7, (Tel : 03-3446-1501), (現在: 九州女子短期大学 初等教育科 〒807 北九州市八幡西区自由ヶ丘 1-1 (Tel. 093-691-3331) E-mail:nagatomo@kyukyo-u.ac.jp)
観測値に混合分布モデル, 特に多変量正規混合分布モデルをあてはめ, EM法を用いてパラメータ推定を行うとき, その初期値を適当に選んだとしても解は必ずしも大域的な最適解である保証はなく, 初期値の設定は重要な問題である. この問題に対して本論文はクラスタリングを混合分布モデルの初期値設定の方法として位置付け, 大域的な解を得る可能性を高くする推定手続きを提案する. 同時にこれを分類法として用いる分類方式を示す. つぎに, データ解析においてさまざまなクラスタリング法で分類を行ったとき, 分類結果が異なるという現象は実際に直面する問題である. 観測値が未知の混合分布からの実現値と仮定できるとき, 混合分布モデルに基づく分類は分類結果を確率的, 統計的に解釈できるので, この意味では合理的である. 従って, 混合分布モデルに基づく分類法はクラスタリングのもつ上記の問題に, ある程度答えることのできるものと考えられる. 本論文では, 混合分布モデルに基づく分類法が誤分類率の意味で, 従来のクラスタリングに比べて有効であることを示す. 実際のデータ解析(Irisデータ, 糖尿病データ, キバハリアリデータ) とシミュレーション実験を通して, 提案した分類方式の有効性を検証し, さらに, 混合分布モデルの分類手法としての有効性を論ずる.
keyword{Finite mixture model, EM algorithm, Mixture approaches to clustering, Maximum likelihood estimation, Hierarchical clustering}
初期値指定クラスター分析
谷口 るり子:大阪国際女子短期大学 国際文化学科
〒570 大阪府守口市藤田町 6-21-57 (Tel. 06-902-0791)
本論文では, クラスター併合の過程における初期値をばらばらな個体の集合とするのではなく, いくつかの個体を集めた対象から出発する, 初期値指定クラスター分析を提案する. 通常のクラスター分析では, 対象は全て対等なものとして扱うか, または場合によっては対象に重みを付けて扱う. この際, 対象が単一の実体ではなく, いくつかの個体から成る集合であれば, 初期値指定クラスター分析の利用が考えられる. 階層的クラスター分析の諸方法の中から, 群平均法, 重心法, Ward 法の3つの方法を取り上げ, 2つのクラスター間の非類似度とその更新の式を, 対象重み付きと初期値指定のそれぞれの場合について示した. それから数値例を用いて, 重みの与え方によってクラスター併合過程が変わる例と, 群平均法において対象重み付きと初期値指定とでクラスター併合過程が変わる例を示した. 最後に, 老人医療データの解析に群平均法によるクラスター分析を用い, 重みなし, 対象重み付きと初期値指定の3つの手法を比較した. その結果, 初期値指定が最良の結果を与えた. 初期値指定クラスター分析は, 個々の個体の情報を利用している点で, 他の2法より優れていると言える.
keyword{Group average method, Medical data for the aged, Object-weighted method}
非対称データに潜む順序構造の探索
中島 晃:北海道大学 大学院 文学研究科
〒060 札幌市北区北10条西7丁目 (Tel. 011-706-4162)
齋藤 堯幸:北海道大学 文学部 行動システム科学講座
〒060 札幌市北区北10条西7丁目 (Tel. 011-706-4051)
歪対称分析(SSA)は, 関係行列から作られる歪対称行列の特異値分解を利用して, 相互関係の非対称性を図示する方法であるが, 解釈が困難になる場合がある. 本論文は, この欠点を克服するために, SSAと一貫性係数および優劣行列の併用を提案する. この方法により, 相互関係に潜在する非対称性に基づく順序構造の探索が可能となる. 応用例として, 世代間職業移動データと混同率データの分析を示す.
keyword{Coefficient of consistence, Dominance matrix, Singular value decomposition, Skew-symmetry analysis}
インターネットへの参加 -- jscs.or.jp運用を通じて --
南 弘征:小樽商科大学 社会情報学科
〒047 小樽市緑 3-5-21 (Tel. 0134-27-5393) E-mail:min@min-s.otaru-uc.ac.jp
水田正弘, 佐藤義治:北海道大学 工学部 システム情報工学専攻
〒060 札幌市北区北13条西8丁目 (Tel. 011-706-6856,6804)
昨今の Internetの普及は極めて加速度的であり, 多くの商用プロバイダの輩出, パソコン通信との乗り入れとも相まって, 参加形態やユーザ層にも大きな変化が生じている. また, World Wide Web(WWW)の普及により, 従来は文字ベースであった電子情報の授受は, 図表, 画像などを併用したいわゆる「マルチメディア」形態に変化しつつある. 本学会も現在, 学会として正式にインターネットに参加, 現在は和文誌編集委員会を中心として, WWW Serverによる情報提供を試験的に始めている. しかし, 昨今の Internetに関する書籍は, 主として個人単位での接続方法や利用方法に関するものが多く, 大学や会社, 学会など組織単位での参加のためのプロセス, その背景などに関して解説されたものは少ない. そこで本稿では, 執筆時点における Internetの現状を紹介しつつ, さまざまな側面から, 今後, 特に組織単位で新たに Internetに参加する際, 留意すべき点などに関する概説を試みたい. 具体的には, 本学会が jscs.or.jp という組織名で Internetに参加するまでの手順にそって, 新たな組織が参加する場合の事例を述べることになる.
keyword{E-mail, WWW, Network Service Provider, JPNIC}
正準相関分析と回帰分析変数選択基準を用いた判別分析変数選択の試み --Sの活用--
上田太一郎:三菱電機東部コンピュータシステム(株) 生産管理部
〒244 横浜市戸塚区川上町 87-1 (Tel. 045-825-5708)
判別分析は, 多変量解析手法において, 回帰分析とならんで使用頻度の高い有用な手法である. その際, 判別分析の説明変数選択は重要なテーマであり, 統計解析ソフトBMDP, SPSS, SASなどにおいてステップワイズ変数増減法がサポートされている. 一方, AT & Tベル研で開発され日本でも普及しているデータ解析言語Sでは, 回帰分析における変数選択基準(leaps)はサポートされているが, 正準判別分析(discr)における変数選択用の関数は標準で用意されていない. 本稿はS言語において, 正準相関分析(cancor)と回帰分析の変数選択基準(leaps)を用いて判別分析の変数選択を試みたものである.
統計入門ソフトウェア StatPartner
吉田 典弘:NECソフトウェア
〒136 東京都江東区新木場 1-18-6 (Tel. 03-5569-3234)
石橋 雄一:スタットラボ
〒174 東京都板橋区中台 3-27-G-1706 (Tel. 03-3935-8361)
統計解析ができる人材の育成が急務になる中, コンピュータを利用した解析実習環境の整備には多くの課題がある. その1つに利用するソフトウェアに関するものがある. 本稿では解析実習環境の整備を目的に開発されたStatPartnerを紹介する.
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