第7巻第2号 目次
-
論文
-
多項反応における回帰分析と診断法 越智義道・岸野清広・上杉博紀・小畑経史
-
対応分析における布置図の信頼性の視覚的表示法 今井英幸・佐藤義治
-
長さの短いデータに対するスペクトル解析法の検討 章 忠
-
任意の対比群について多重比較を行う数値積分プログラム 岸本淳司・浜田知久馬
-
動的な対散布図の提案とその実現について 水田正弘
-
時間遅れ観測値をもつ優位性比較での群逐次方式について 道家暎幸
-
粒子天文学における信号/ノイズ識別の試み
-- Protheroeの円環統計の改善と具体的適用 -- 山下敬彦・和田倶典・山本 勲・北村 崇
-
総合報告
-
知的ファジィコンピューティング
-- ファジィ理論と機能言語理論の邂逅-- 菅野道夫
-
ソフトウェア記事
-
epicure: リスク解析ソフトウェア Dale L. Preston・谷口るり子
-
学会活動記事
-
日本計算機統計学会第8回大会報告
-
1993年度日本計算機統計学会学会賞の受賞者
-
欧文誌掲載論文概要: J. Japanese Soc. Comp. Statist., 6(2), 1993
-
関連学会記事
-
COMPSTAT'94に参加して 森 裕一・林 篤裕
-
第8回日韓統計会議に参加して 金 鉉彬
-
読者の広場
-
昨今のInternetの流行について 南 弘征
-
成蹊大学経済学部における情報教育の現状 中西寛子
-
編集委員会からのお知らせ
-
執筆要項 編集委員会
-
ソフトウェア記事:募集要項 編集委員会
多項反応における回帰分析と診断法
越智義道, 小畑経史:大分大学 工学部 知能情報システム工学科
〒870-11 大分市旦野原 700 (Tel. 0975-69-3311)
岸野清広:スズキ(株) 元: 大分大学大学院工学研究科組織工学専攻
上杉博紀:新日鐵情報通信システム(株) 元: 大分大学大学院工学研究科組織工学専攻
Pregibonが提案した2項ロジスティック回帰分析の診断手続きを拡張して, 反応が多項反応である場合の回帰分析手法に関する回帰診断法を提案する. 多項反応の場合, 反応に関する順序の有無や順序に関するモデル化の形態により多項ロジスティックモデルや累積ロジット, 隣接ロジット等, 種々の関連の指標をもとに分析が行われる. ここでは, これらの指標をもとにした回帰分析の際に適用可能な診断手続きを提案するとともに, いくつかの文献データについて分析を行い, これらの診断法に関する有効性と問題点について検討を行う.
keyword{Categorical data, Logistic regression, Influential observations, Outliers, Leverage points}
対応分析における布置図の信頼性の視覚的表示法
今井英幸, 佐藤義治:北海道大学 工学部 システム情報工学専攻
〒060 札幌市北区北13条西8丁目 (Tel. 011-706-6809)
対応分析(Correspondence Analysis)は外的基準のないアイテム・カテゴリー型データの分析に用いられる手法である. 対応分析の結果として得られる数量化スコアは同時布置図によって視覚的に表現され, パターン分類などに用いられることが多い. 対応分析による布置図はデータの出現確率のみで決まり, データ数には依存しない. しかし, 布置図の信頼性はデータ数に依存すると考えられる. 従って分類を正しく行うためには布置図の信頼性を視覚的に表示することが必要となる. 本論文ではデータが多項分布に従うという仮定のもとで信頼領域を構成して布置図に加えることにより, このような信頼性を表示する方法を提案し, その有効性を数値実験により確かめる.
keyword{Simultaneous representation, Confidence region}
長さの短いデータに対するスペクトル解析法の検討
章 忠:岡山県立大学 情報工学部
〒719-11 岡山県総社市窪木 111 (Tel. 0866-94-2084)
スペクトル解析はランダム現象, 特に乱流現象を解明する上で重要な手段である. 本研究では, 長さの非常に短いデータに対するB-T法(Blackman-Tukey, 自己相関関数のフーリエ変換によってパワースペクトルを求める方法), DFT法(Discrete Fourier Transform, 有限離散データのフーリエ成分から, 直接パワースペクトルを求める方法)およびMEM( Maximum Entropy Method, Burgのアルゴリズムによってパワースペクトルを求める方法)によるスペクトルを, パワースペクトルの明らかな5種類の典型的なランダム信号を用いて比較検討した. その結果, MEMはDFT法とB-T法と比べて優れたスペクトル分解能を持っており, 短いデータからでも高分解能, 良好な精度の推定ができる. しかしこの場合, 観測データに適合するかどうかという問題が存在している. これは多数標本のアンサンブル平均パワースペクトルを求め, 標本毎に最適な項数を使用することにより改善することができる.
keyword{Power spectra, Short data, DFT method, B-T method, MEM}
任意の対比群について多重比較を行う数値積分プログラム
岸本 淳司:(株)SASインスティチュートジャパン統計解析研究室
〒104 東京都中央区勝どき 1-13-1 (Tel. 03-3533-6921)
浜田 知久馬:東京大学 医学部 薬剤疫学教室
〒113 東京都文京区本郷7-3-1 (Tel. 03-3815-5411)
任意の対比をとり多重比較を行うと, 一般に多重数値積分を実施しなければならない. 従来このような直接的計算はきわめて困難であるとみなされていた. しかし, コンピュータの速度の向上により, 計算の可能性が示唆される. 今回 SAS/IML言語で試作したプログラムでは, 4変量までの多変量正規分布の分布関数が計算できた. 本論文では, この成果を臨床試験における薬効評価問題に適用することにより, 実現可能性の高い用量依存性のパターンに対し検出力が高く, また多重性の考慮による検出力の損失が少ないCochran-Armitage検定の係数群についての検定を提案する.
keyword{Multiple normal distribution function, Maximum contast method, Phase II study}
動的な対散布図の提案とその実現について
水田正弘:北海道大学 工学部 システム情報工学専攻
〒060 札幌市北区北13条西8丁目 (Tel. 011-706-6856) E-mail: mizuta@huie.hokudai.ac.jp
多変量データを視覚化することによりデータのもつ構造を探索的に解析することが可能となる. このための手法が多変量グラフィカル手法として数多く提案されている. 特に最近では図形の動きを利用した手法が注目されている. 本論文では, 多変量データの比較的自然な表示法である対散布図に点の動きを導入する方法を提案する. すなわち, 利用者の指示に従ってデータの座標系を連続的に変化させることにより, 対散布図上の点を連続的に動かす. これにより, これまで提案されてきた多くの動的な表示法ではデータを1つの散布図における点の動きで表現するのに対し, 複数の散布図における点の動きでデータを表現することが可能になる. また, 本手法を実際にコンピュータで実現する際の問題点とその対策, システムの付加機能についても考察する.
keyword{Graphical representation, Dynamic graphics, Rotation}
時間遅れ観測値をもつ優位性比較での群逐次方式について
道家暎幸:九州東海大 工学部 情報システム工学科
〒962 熊本市渡鹿 9-1-1 (Tel. 096-382-1141)
従来, 臨床試験での2処置間の優位性比較のための群逐次決定方式は, 検査個数の経済性, 解析回数の能率性などの点で有効な検定方式である.本群逐次決定方式は2値変量のペアデータに基づいて2処置間の有効率の差の検定を行う. これは, 観測値ペアの反応をプロットした標本点のパスが3項ランダム・ウォークになることから, 3項分布を利用した群逐次デザインになる. この群逐次デザインを構築する際, 処置の実施と反応結果の入手との間に時間差が存在するような時間遅れ観測値を考慮した. さらに, 試験中に劣性処置を受ける被験者数は少なくなければならないという被験者への倫理的観点から, この群逐次デザインを評価した.
keyword{Group sequential procedure, Trinomial sequence, Colton's criterion}
粒子天文学における信号/ノイズ識別の試み --- Protheroeの円環統計の改善と具体的適用 ---
山下敬彦, 和田倶典:岡山大学 理学部 物理学科
〒700 岡山市津島中3-1-1 (Tel. 086-251-7811)
山本 勲:岡山理科大学 工学部
〒700 岡山市理大町1-3 (Tel. 086-252-3161)
北村 崇:近畿大学 理工学総合研究所
〒577 東大阪市小若江 3-4-1 (Tel. 06-721-3161)
粒子天文学においては, S/N比のよいデータ集団を悪い集団から識別する手法が希求されている. 我々は, 特定天体に由来すると想定される稀少なミューオンを通常の膨大量のミューオンから識別することにより, 稀少なミューオンの発生機構と母粒子の特定とを目指している. そのために, Protheroeによって提案された, 小さいサンプル (n<200)に対する円環統計法を拡張, 改善して, 我々のミューオン望遠鏡の計測結果に適用することを試みた. いくらかの改良すべき課題は残っているものの, 適用できる可能性のあることがわかった.
keyword{Circular statistic, Directional data, Rare event, Particle astronomy}
知的ファジィコンピューティング --- ファジィ理論と機能言語理論の邂逅 ---
菅野道夫:東京工業大学 大学院 システム科学専攻
〒226 横浜市緑区長津田町 4259 (Tel. 045-924-5641,5645)
知的ファジィコンピューティングの発想の背景には, 日常言語学派による20世紀の言語観がある. それは, 言語の日常的使用にこそ言語の本質が見い出せると主張するものである. 私は「ヒトの知」は「言語の使用」によって生み出されたものであると考える. 従って, 知的システムの実現を考えるとき, 言語自体あるいはヒトの言語能力と直接的連関においてでなければならない. ファジィコンピューティングは, 「言語の曖昧性」への着眼, 「言語によるモデリング」への考えという2点において言語と連関している. 一方, ヒトの言語システムにおいて, 文法システムではなく, 意味のシステムとして言語を扱う理論の中で現在最も強力といわれているのは, ハリデーが提案している選択体系機能言語学(Systemic Functional Linguistics)である. 知的ファジィコンピューティングのパラダイムの中では, 言語は情報の意味処理のためのメタ言語として捉えられ, 選択体系機能言語学はメタ言語の意味解釈の理論である. 知的コンピューティングではファジィコンピューティングの技術を利用しつつ, 言語の意味処理をすることになるが, このためには大規模状況データベースが必要となる. ヒトの活動領域の数が有限であることを考慮すると,このデータベースの構築は夢ではない.
epicure: リスク解析ソフトウェア
Dale L. Preston:(財)放射線影響研究所
〒732 広島市南区比治山公園5-2 (Tel. 082-261-3131)
:HiroSoft International Corporation
〒730 広島市中区鶴見町11-8-1103 (Tel. 082-242-6041)
谷口るり子:大阪国際女子短期大学
〒570 守口市藤田町6-21-57 (Tel. 06-902-0791)
EPICURE は, コマンド形式の高速なリスク解析プログラムで, パーソナルコンピュータならびにワークステーションで稼動する. EPICURE を用いると, 生存時間データ, 2項あるいはポアソンデータ, 症例対照データの解析ができる. 本稿では, EPICURE の特徴と機能を概説する.
各号の紹介へ戻る