第4巻第1号 目次
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論文
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統計的パターン認識における『超ボリューム』概念の展開:分類問題への適用
湯田浩太郎
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因子分析における最小2乗法と「正規」最尤法の非正規分布のもとでの比較実験
猪原正守・松浦孝夫
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項目選択データに対する潜在クラス分析法 林 篤裕
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対称式の変換アルゴリズムとその多変量統計量分布論への応用 中川重和・仁木直人
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総合報告
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ベキ正規分布のパラメータの推定:推定量の漸近挙動について 後藤昌司・山本成志・井上俊昭
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ソフトウェア記事
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分子設計支援システムCHEMTERM 大村正希・島内啓行
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臨床開発支援システムSCIENCE 本川清徳・倉林浩行・浜島広思
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多次元統計解析システムJUSE−MDSAの機能と対応分析法 片山清志・石川 茂
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統計解析システムADDL/WSの機能と実装 平井一人
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学会活動記事
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日本計算機統計学会第4回大会報告 仁木直人
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1989年度日本計算機統計学会賞の受賞者 白旗慎吾・栗原考次
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第4回日本計算機統計学会シンポジウム報告 有木 徹
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欧文誌掲載論文概要:J.Japanese Soc.Comp.Statist.,2,1989
田中 豊・垂水共之
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関連学会ニュース
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第7回日韓共同統計学会議:参加報告 岡崎威生
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第9回COMPSTATに参加して 一村 稔
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読者の広場
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私と多変量解析諸法 野口博司
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「優秀賞」を受賞して 大西治男
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IPSによる和文誌の組版作業を担当して 宮本優子
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和文誌を陰で支える仲間たち 後藤昌司・松原義弘
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編集委員会からのお知らせ
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執筆要項 編集委員会
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ソフトウェア記事:募集要項・改訂 編集委員会
統計的パターン認識における『超ボリューム』概念の展開:分類問題への適用
湯田浩太郎:富士通(株) 第四製造工業システム部
〒105 東京都港区西新橋3-21-8 FACOMビル (Tel. 03-3437-5111)
統計的パターン認識手法では, 対象として扱う個々のパターンは, パターン空間中でボリュームのない「点」として扱われてきた. 本稿では, パターンを, あるボリュームをもつ「特性空間」として扱う新しい概念を提唱した. この概念の導入により, 統計的パターン認識の分野で, 従来手法にはない様々な特徴をもつ新たな解析手法の開発が容易となる. この概念に基づいた分類手法の一例として, 特性空間の重なりを基準として分類する「超球法」を開発した. 従来手法との比較を行うために, アルゴリズム的に最も類似した最近隣法(k-NN法)をとりあげた. そして, この比較の過程で, 重なりを評価する尺度である超球内部の密度が均一な「平坦モデル」と超球内部の密度に勾配のある「傾斜モデル」の二つを導入した. 後者の傾斜モデルを用いた分類の接近法にはファジィ理論を導入した. このとき, 従来手法のk-NN法に内在する分類上の矛盾を超球法あるいは「傾斜超球法」によって解決できることがわかった.
keyword{Hyper sphere, Sloped hyper sphere, Fuzzy theory, k-NN method, Pattern recognition}
因子分析における最小2乗法と「正規」最尤法の非正規分布のもとでの比較実験
猪原正守, 松浦孝夫:大阪電気通信大学 工学部 経営工学科
〒572 大阪府寝屋川市初町 18-8 (Tel. 0720-24-1131(2364))
本報告では, 因子分析における代表的な3種の推定方法である, 単純最小2乗法(SLS:Simple Least Squares method), 重み付き最小2乗法(WLS:Weighted Least Squares method), 正規分布を想定した最尤法(NML:Normal Maximum Likelihood method)の正規性の崩れによる影響度をモンテカルロ法によって調べた. なお, 以下では, 正規分布を想定しての最尤法を単に, 正規最尤法という. 数値実験は推定方法(3水準), 標本サイズ n(100と300の2水準), 独自分散の真値の大きさ(大と小の2水準), 非正規変数の選択(2水準)の各々の組み合わせに対して200回の反復によって行った. その結果, 標本サイズが比較的小さいか, あるいは独自分散が比較的大きいときに, 独自分散推定量と因子負荷推定量の平均平方誤差に関して, SLSがとりあげた非正規分布に関係なく一様に優秀であり, その分布の尖度あるいは歪度がゼロでないときにはWLSが最も頑健であり, NMLとSLSが同程度に敏感であった. また, 非正規分布の尖度による影響が歪みによる影響よりも推定誤差に関してより重大であることがわかった.
keyword{Factor analysis, Least-squares methods, Maximum likelihood method, Non-normality, Monte Carlo study}
項目選択データに対する潜在クラス分析法
林 篤裕:川崎医科大学 数学教室
〒701-01 倉敷市松島577 (Tel. 0864-62-1111)
潜在クラス分析は, 顕在行動を支配する潜在概念を数学的にモデル化し解明する方法として開発され, 検討されてきた. この手法はすべての設問項目に対する2値応答に基づいて対象集団をいくつかの潜在クラスに分割する. 本論文では, 設問項目の全体から一定数の項目を選択して調査されるデータに対するクラス分折法について検討する. この項目の選択方法に関しては, 選択順位を有する場合と有しない場合の2通りを考慮する. これらについて, それぞれの定式化とそれに基づく解法を与え, 数値検証を行う.
keyword{Latent structure analysis, Latent class analysis, Multiple responses, EM algorithm}
対称式の変換アルゴリズムとその多変量統計量分布論への応用
中川重和:九州大学 大学院 総合理工学研究科
〒816 福岡県春日市春日公園 6-1 (Tel. 092-573-9611)
仁木直人:九州大学 理学部 基礎情報学研究施設
〒812 福岡県福岡市東区箱崎 6-10-1 (Tel. 092-641-1101)
多変量統計量の分布を求める問題は古くからの研究テーマである. しかし,その分布関数あるいは密度関数を正確に表す(そのまま数値計算が可能な)式が求められることは特殊な場合のみで, しばしば(Edgeworth型の)漸近展開の形で求めざるを得ない. しかし, 高次のEdgeworth展開を実際に求めるためには, 高次モーメントおよびキュムラントが必要であり, その導出に要する莫大な量の代数的計算が障害となる. 特定の問題に限れば, 数式処理の利用により, この障害は乗り越えられているが, より一般的な分布に対し適用できる方法が望まれている. 著者らは, 観測値に関する対称性に着目し, 対称式の基底変換によるモーメント導出アルゴリズムを提案し, 多くの有用な多変量統計量を含むある統計量の族に対して適用可能な導出方式を開発した. 本報告は, 現在までの著者らの研究成果を概観し, 今後の発展に資するためのものである.
keyword{Asymptotic expansion, Computer algebra, Delta method, Edgeworth expansion, Symmetric function}
ベキ正規分布のパラメータの推定:推定量の漸近挙動について
後藤昌司, 山本成志, 井上俊昭:塩野義製薬(株) 解析センター
〒564 吹田市泉町 1-22-41 (Tel. 06-384-1171)
ベキ正規変換は、線形モデルを想定する標準的な統計的方法において, 一般に想定される(i)モデルの加法性, (ii)誤差の分散一定性, (iii)(応答)観測値の正規性の仮定を満たすように, 観測値の尺度を変換することを意図している. ベキ正規変換の実地の適用では, (1)変換後に想定モデルの線形性や加法性を狙う接近法と, (2)想定モデルの誤差の正規性あるいは正規変換前の観測値の(原測定尺度上の)分布, すなわちベキ正規分布を同定する接近法がある. 本報告では, ベキ正規変換の基礎にある理論分布としてベキ正規分布を紹介し, その特性について簡単に述べる. 次に, ベキ正規分布のパラメータの最尤推定量の漸近挙動を評価する. とくに, 変換パラメータ(λ)と変換後に顕在化する打ち切り点kの打ち切り正規分布の母集団パラメータ(平均μと分散σ^2)の最尤推定量の漸近分散および相互の漸近共分散を微小σ近似法で評価し, kの変化に伴う挙動を吟味する. これらの結果より, kが大きくなるにつれてμとσ^2の最尤推定量の漸近分散(共分散)はkと無関係となり, λの最尤推定量のみがそれ自体の漸近分散およびμとσ^2の最尤推定量との漸近共分散に影響を及ぼすことが明瞭になる. さらに, ベキ正規変換に絡む諸種の問題, とくに変換パラメータの解釈について触れる. また, ベキ正規変換が尺度不変性をもたないことから, その変換を調整した規準化変換の一般式を提示する.
keyword{Power-normal transformation, Asymptotic normality, Small σ approximation, Truncated normal distribution}
分子設計支援システムCHEMTERM
大村正希, 島内啓行:(株)富士通九州システムエンジニアリング
〒812 福岡市博多区博多駅前 1-5-1 (Tel. 092-472-6611)
CHEMTERMはパーソナル・コンピュータ向けに開発された分子設計支援システムである. また, ホスト・コンピュータとも連携でき, 幅広い研究ができるように設計されている. ここではCHEMTERMを, その機能を中心に紹介する.
臨床開発支援システムSCIENCE
本川清徳, 倉林浩行, 浜島広思:(株)電通国際情報サービス
〒164 東京都中野区中野 4-11-10 (Tel. 03-3228-6155)
多次元統計解析システムJUSE−MDSAの機能と対応分析法
片山清志, 石川 茂:(株)日本科学技術研修所 数理部
〒151 東京都渋谷区千駄ヶ谷 4-30-3 (Tel. 03-3279-6921)
新たに開発された多次元統計解析システムJUSE-MDSAの機能と特徴について, ユーザ本位のデータ解析を如何に行うかという観点から述べる. 併せて対応分析法の簡単な解析例を紹介し, 基礎編・対応分析編についての画面出力例を示す.
統計解析システムADDL/WSの機能と実装
平井一人:日本電子計算(株)大阪支店
〒550 大阪市西区江戸掘 1-9-1 肥後橋センタービル (Tel. 06-448-6024)
ADDL/WS は日本電子計算(株)が開発したUNIX系ワークステーション(WS)上で作動する統計解析システムである. ADDL/WS は総合情報処理環境 MOA(Marketing OA)のサブシステムでもあり, 統計解析機能に加えてデータの加工・蓄積機能, および市販ソフトウェアとのデータ互換機能も有している. また, ADDL/WS はホスト・マシン上のシステムを基礎とする信頼性の高さとウィンドウ・システムを使用した操作性の良さ, ならびに低コスト・高パフォーマンスを特徴としている. 本稿では, ADDL/WS のシステム構成, 統計解析機能, 操作性を紹介する.
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