連続ウェーブレット変換(Continuous Wavelet Transform; CWT)は時間--周波数解析の 道具として優れた性質をもち, さまざまな分野での応用が試みられているが, 変換の核となるマザーウェーブレット(Mother Wavelet; MW)の選択が重要であるにもか かわらず, 統一された選択方法がないのが現状である. 本研究ではモデル信号を用いてMWの 特性を比較検討し, それらの選択について検討した. その結果, 通常の時間--周波数解 析の場合, 複素数型MWを選択する方がよいという知見が得られた. また, 実数型MWは その関数の対称性が重要な個性であり, 信号の中の異なる性質を抽出するときなど に有効であった.
Key words: Mother wavelet, Real type wavelet, Complex type wavelet, Symmetricalness群逐次決定方式は反応が1変量正規分布に従うと仮定したとき, その群観測値 をもとに, 2処置間の差の検定を行う. いくつかの臨床試験では, 1反応よりむしろp反応で処置の効果を評価した方 が有効である. この多変量観測値をもとに群逐次検定を実行するためには, χ2 統計量 またはHotellingの T2 統計量を用いることが考えられる. しかし, これらの統計量は2次形式で与えられるため, 直接 p反応中のいくつかの反応の寄与を調べることはできない. 本論文では, 2つの処置のp反応ベクトルが多変量正規分布に従うものと仮定 し, この2つの平均ベクトルの差をもとに, p反応中のいくつかの反応の寄 与の有無を検定するための群逐次検定方式を導く. この群逐次検定を具体化するために, Raoによるadditional informationの検 定理論(1952)の中で述べられているの T2統計量を用いて群逐次 T2統計量を提案する. さらに, 平均検査個数を少なくする群逐次検定を実現するために, Jennison-Turnbull (1991)の方法を拡張した修正群逐次 T2 統計量を提案 する. この2つの統計量を使い, 繰り返し信頼限界を設定した後, 検出力, 平均観測 個数に関して, 2つのT2 検定統計量にもとづく群逐次検定手法を比較する.
Key words: Group sequential test, Rao's additional information test, Hotelling's T^2 statistic
組合せ的階層分類法における重要な概念の
1つに ``空間の歪み" がある.
空間の歪みは Lance & Williams (1967) によって
初めて導入され, その後 DuBien & Warde (1979),
Nakamura & Ohsumi (1990) によって数学的な定式化が
なされた.
これらの論文における空間の歪みは, 用いる手法 (更新距離) の
パラメータとの関係で論じられ, データとの関係は扱われなかった.
つまり, いかなるデータを解析しているかによらず, 同一の手法を用いていれ
ば同一の空間の歪みをもつと解釈されていた.
しかしながら, 我々はこの現象
が手法の違いのみに依存するのではなく, 解析するデータによって
も影響を受けることがあると考え, 手法 (更新距離) とデータの
両方を考慮した空間の歪みの新たな指標を提案する.
加えて, 新指標に基づき, 歪みをコントロールする組合せ的
階層分類法を提案する.
最後に, Peay (1975) のデータを用い, 新指標によるいくつかの組合せ的手法
における空間の歪みの評価を行う. また, 歪みをコントロールする手法による
解析結果についても比較検討を行う.
コンピュータの処理能力の飛躍的な向上により蓄積された大量のデータから知 識を獲得する方法へのニーズの高まりとともにデータマイニングは発展しつつあ る. 初期の試行段階から応用の成果が出始めている現在も, データマイニングの全 体像は確定したとは言い難いが, 本稿では, 主としてビジネスの分野での応用 という観点から, データマイニングの手法と応用に関する現状を整理して報告 する. 本報告ではデータマイニングを「大量のデータから有用な知識を獲得するプロ セス」と位置づけ, そこで利用される主要な手法の要点を紹介した上で, 従来 の統計分析との違い, ソフトウェア, 利用状況について概観する. 最後に手法面・応用面の課題と展望に触れる.
Key words: Decision tree, Neural network, Clustering, Association rule感度分析のプログラム``SAMMIF (Sensitivity Analysis in Multivariate Methods based on Influence Function)"の概要について報告する. 本プログ ラムで, Tanaka et al. (1990) や Tanaka (1994) などで提唱された感度分析 の一般的手順に基づいて, 「データの入力」→「事前解析」→「診断」→「事後解析」→「比較」の 一連の処理を行う. 「診断」の部分では, 単独で影響の大きい観測値を探す単数観測値診断と複数 個で同じような影響をもつ観測値の集合を探す複数観測値診断が可能で, その 数学的道具として影響関数を利用している. 複数観測値診断では, ある特定の条件下では, 感度分析のもう1つの数学的道 具であるCookのlocal influenceと等価な情報も提供する. パッケージの特徴としては, 感度分析の一般的手順にそって簡単に分析が進め られる点, Windowsソフトとしての GUI の強化, 初心者と専門家の両方に対応 したオプションを用意したことなどがあげられる. 本バージョンでは, 主成分分析, 正準相関分析, 因子分析の各多変量手法にお ける感度分析が実行可能で, このパッケージを利用することにより, 単独で影響の大きい観測値だけでなく複数個の観測値の影響が容易に評価できるようになった.