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I

「計算機統計学」第19巻2号 目次・要旨

論文

Tukey-Kramer法に関連した分布の上界
白石高章
主成分分析における軸の回転について
林邦好・冨田誠・田中豊
時間依存性共変量を考慮した再発事象モデルのパラメータ推定精度
西島啓二・鎌倉稔成

特集 時空間統計

方向統計学の最近の発展
清水邦夫
統計的学習理論による多重分光画像の画素判別
西井龍映・江口真透

学会活動記事

日本計算機統計学会第20回大会報告
村上征勝
欧文誌掲載論文概要: J. Japanese Soc. Comp. Statist., 18(1), 2005
越智義道・濱俊光

関連学会記事

IASC-ARSに参加して
山田隆行
Tukey-Kramer法に関連した分布の上界
白石高章

正規分布を仮定した多群モデルにおいて, すべての平均の多重比較として, テューキー・クレマー法が多くの統計書に紹介されている. 群サイズが異なる場合には, テューキー・クレマー法に関連した統計量max1≦i<i'≦k|Tii'|の分布は容易な積分で表現されていないが, 下界を与える分布として, スチューデント化された範囲の分布が知られ, この分布の上側確率点を使って保守的な多重比較法が実行される. 本稿では, 関連した統計量の分布の上界を与える分布を導き, この分布を利用して, スチューデント化された範囲の分布を使用した多重比較法の保守度が小さいことを, 数値積分を使って示す.
主成分分析における軸の回転について
林邦好・冨田誠・田中豊

主成分分析(PCA)は, 変量の次元を縮約する多変量統計解析の代表的な手法である. 主成分の意味付けをするために, 固有ベクトルを解釈することになるが, 特に主成分数を多くとる場合など, しばしば主成分の解釈が困難な状況に遭遇する. 解釈を容易にするために, 因子分析の場合のように軸を回転させることができれば便利である. 先行研究では, 主成分係数を回転対象とする方法と主成分負荷量を回転対象とする2つの立場がある. 本論文ではPCAを次元縮約の方法と捉え, 縮約された低次元空間の中で解釈し易いように座標軸を導入するという立場で, Jolliffe(1995)の提唱した3つの基準化の方法及び回転対象として主成分係数・主成分負荷量のどちらを選ぶかという問題を整理し, 2組の実データ及び因子分析モデルに従って生成した人工データに適用して数値的検討を行った. その結果, 基準化3(分散が1に等しくなるように基準化した場合)では, 主成分負荷量を直交回転する方が対比が形成されにくく, 1つの軸に1つの意味が付与できることが明らかになった.
時間依存性共変量を考慮した再発事象モデルのパラメータ推定精度
西島啓二・鎌倉稔成

本研究では, 異なる2つの薬剤を比較する調査や研究において, 再発事象の正確な発現時間データの収集が困難な場合を想定し, 時間依存性共変量を伴う再発事象データを区間ごとの再発回数データとして収集し, 周辺尤度あるいは全尤度に基づき解析する場合の薬剤効果を表すパラメータの推定における効率について検討した. 時間依存性共変量が観測される時点は1時点とし, 治療期間を2つまたは3つの区間に分割することとした. 治療期間を2分割する場合では, 周辺尤度に基づく研究から, 時間依存性共変量が観測される時点を分割点とすることでバイアスをほとんど伴わない推定が行え, パラメータ推定の効率が最も高くなることが示唆された. 治療期間を3分割する場合については, 時間依存性共変量が治療期間の中央で観測されるデザインに限定し, 治療期間前半を2等分する場合, 治療期間後半を2等分する場合, 治療期間を3等分する場合(周辺尤度の場合)の各分割方法における効率の比較を行った. その結果, 全尤度及び周辺尤度のいずれにおいても, 時間依存性共変量が観測される時点を分割点に含む治療期間前半を2等分する分割方法で効率が高くなることが示唆された.



方向統計学の最近の発展
清水邦夫

方向統計学における主に2000年以降の文献に基づいて本分野の発展を概観する. 円周上および球, トーラス, シリンダー, 円盤上の分布の生成と応用例について述べる. その他, 回帰と確率過程, 推定と検定, ソフトウェアの現状について報告する.
統計的学習理論による多重分光画像の画素判別
西井龍映・江口真透

人工衛星に搭載したセンサから得られる多重分光画像のように, 画像の各点で多変量データが観測されている状況を考えよう. 各画素の水域や市街地等のカテゴリを推測する判別手法を考察する. 多変量データが各画素ごとに独立であると仮定すれば, 様々な判別手法が利用できる. さらにカテゴリの空間的従属性を利用すれば, 判別効率を向上することができる. ここではNishii & Eguchi(2005)が提案した統計的学習理論に基づく判別手法Spatial Boostについて考察し, その適応範囲を広めた手法をレビューする. また人工データや実データに適応し, 手法の有効性を示す.

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