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「計算機統計学」第16巻2号 目次・要旨

論文

拡張主成分の性能と評価
飯塚誠也・森 裕一・垂水共之・田中 豊
双対尺度法と入れ替えのアルゴリズムによる分類 中村好宏・馬場康維
正規化変換に基づく超幾何分布の近似 大内田征二・種市信裕・汪 金芳
格付けデータの比例性と線形性の検証: 隣接カテゴリーロジットモデルによる分析
安川武彦・椿 広計
群間に共通な線形傾向を仮定したクラスタリング法とその応用
黒木 学・平田 大・宮川雅巳

学会活動記事

第17回日本計算機統計学会大会報告 塚田真一
欧文誌掲載論文概要: J. Japanse Soc. Comp. Statist., 15(1), 2002
越智義道

関連学会記事

ISI2003参加記 藤野友和
拡張主成分の性能と評価
飯塚誠也・森 裕一・垂水共之・田中 豊

拡張主成分分析とは,一部の変数を用いて元の全変数を最もよく代表するような主成分を推定しようというものである. この拡張主成分分析によって得られる主成分が元の変数のもつ情報や潜在的な構造をどれだけ再現しているかについて評価を行うことが本論文の目的である.
ここでは,因子モデルに従う人工データを作成し,その潜在因子をどれだけ再現しているかについて,拡張主成分と通常の主成分のそれぞれについて調べ, その結果を比較することによって拡張主成分の性能を評価した.具体的には,因子負荷量のパターンをいくつか設定し,それぞれのパターンに対して, 選択される変数の数ごとに,拡張主成分と潜在因子,および通常の主成分と潜在因子の布置の近さをRV係数で測ることで,評価を行った.
このシミュレーションの結果,主成分分析を行うような状況において,拡張主成分は通常の主成分より潜在的な構造をよりよく再現していることが明らかになった.
双対尺度法と入れ替えのアルゴリズムによる分類
中村好宏・馬場康維

実際の解析において質的データに関する明確な分類が求められる場合がある. これまでの質的データの解析法では, データ構造の記述は行っても, 個体または変数に明確な分割を与えるような分類は行えない. これらの手法で尺度を与え, それを用いて分類を行うという2つのステップが必要とされる.
データ構造の記述と分類を同時に行う手法は, 等質性に基づくクラスタリング(中村, 1999; Nakamura & Baba, 2000)が提案されている. しかしこれは連続量のデータへ適用する手法であり, 質的データの解析には適さない. 本論文では, 等質性に基づくクラスタリングに用いられたアルゴリズムを質的データに拡張した手法を提案する. この手法は双対尺度法と変数入れ替えを組み合わせたアルゴリズムで, データ構造の記述と個体もしくは変数の明確な分割を得ることを目的としている. ここでは手法を提案し, データへの適用例を示す.
正規化変換に基づく超幾何分布の近似
大内田征二・種市信裕・汪 金芳

正規化変換は,統計量の精密な近似を得るために有効である.本論文では, Konishi(1981,1991), Taneichi et al.(2002)により提案された正規化変換の一般論に基づき,超幾何分布の正規化変換を考察し,これにより新しい超幾何分布の近似 を与えた.数値計算によりこの正規化変換に基づく性能を,従来の代表的な超幾何分 布の近似と比較した.その結果,本論文で提案された近似は従来の近似に比べ,非常 に多くの状況で精度が優れていることがわかった.
格付けデータの比例性と線形性の検証: 隣接カテゴリーロジットモデルによる分析
安川武彦・椿 広計

格付けデータの隣接カテゴリーロジットモデルによる分析を報告するとともに, このモデルを使って比例性と線形性の仮定を検証した. 格付けデータの分析には, これまで順序ロジットモデルや順序プロビットモデルが利用されることが多い. しかしながら, これらのモデルが前提とする比例性と線形性の仮定は検証されてこなかった. 本論では, 格付けの実務的論理に即した隣接カテゴリーロジットモデルの適用を試みるとともに, 比例性の仮定と線形性の仮定の検証を行った. 分析は, まず隣接カテゴリーロジットモデルを比例性と線形性を仮定しないモデルに拡張して識別し, 続いてそのモデルを利用してこれらの仮定をAICにより検証した.
その結果, 比例性と線形性の仮定はいずれも満たされていないことが明らかとなった. 特に, 格付けデータでは比例性の仮定が大きく崩れており, 線形性のみを緩めたモデルよりも比例性のみを緩めたモデルの方がデータへのあてはまりがよいことがわかった.
群間に共通な線形傾向を仮定したクラスタリング法とその応用
黒木 学・平田 大・宮川雅巳

k-means法は, クラスター中心との類似性を示す指標を用いて, 個体を分類する 手法である. このクラスタリング法は, 各群における個体間の類似性に着目して いるため, 群間の特徴付けには適していない. また, 多変量データの次元が大き くなると, 解析結果を視覚的に捉えることが困難となる.
本論文では, k-means法におけるクラスター中心の概念を直線や平面に拡張した k-planes法を提案する. qk-planes法の導入により, k-means法は0次k-planes法として位置付けることができる. また, 適当なqk-planes法を適用したとき, データをqk-planesの補空 間へ射影することで, 解析結果を視覚的に捉えることが可能となる.

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