第13巻2号 目次


論文
Kaplan-Meier積分に対する自己一致方程式とその応用 鈴川晶夫・種市信裕
QRDA手法の応用性の評価 --- 悪臭の実験データへの適用 --- 齋藤堯幸・斉藤幸子
DLLSA: Dynamic Link Libraryを用いた統計解析ライブラリ 竹内光悦・宿久 洋・山口和範・渡辺美智子・浅野長一郎
ソフトウェア記事
SAS LOGISTICを用いた条件付尤度によるロジスティック回帰の正確な推測 浜田知久馬・岸本淳司
学会活動記事
第14回日本計算機統計学会大会報告 稲田浩一
欧文誌掲載論文概要: J. Japanese Soc. Comp. Statist., 12(1), 1999 正法地孝雄
関連学会記事
COMPSTAT 2000に参加して 山本 渉
第7回日中統計学シンポジウムに参加して 山口和範
読者の広場
奨励賞を受賞して 宿久 洋
修正
尺度混在データの冗長性分析(齋藤・中島, 1996)の修正 齋藤堯幸・中島 晃
編集委員会からのお知らせ
執筆要項 編集委員会
ソフトウェア記事: 募集要項 編集委員会
著作権等について 編集委員会


Kaplan-Meier積分に対する自己一致方程式とその応用
鈴川晶夫・種市信裕:帯広畜産大学畜産学部畜産管理学科

打切りデータに基づくノンパラメトリック最尤推定量であるKaplan-Meier推定量$\hat{F}_n (t)$ (Kaplan and Meier (1958))は, 生存時間データの解析において最も重要な推定量であり, これに対する自己一致方程式がEfron (1967)によって示されている. この方程式は, 打切りデータを欠測値のある不完全データとみなしたときに, その不完全部分がKaplan-Meier推定量においてどのように推定(補完)されているかを示す重要なものである. 本論文において, Kaplan-Meier積分$\int \phi (t) \, d \hat{F}_n (t)$に対する自己一致方程式を導出した. この方程式は, 被積分関数$\phi$を$\phi(t)= I(t > x)$とするとEfron (1967)の自己一致方程式に一致するという意味において, その一般化である. ただし, $I(A)$を集合$A$の定義関数とする. また, 本論文において, Kaplan-Meier積分の自己一致方程式の応用として, 次の三つの問題について議論した. (1) 打切りデータに基づくパラメトリック推定量の漸近一致性に関する結果(Suzukawa, Imai & Sato, 2001)をデータの不完全性の補完という観点から解釈する問題, (2) 単調関数$\phi$に対して, $\int \phi (t) \, d \hat{F}_n (t) =\int \phi (t) \, d \hat{F}_{n}^{(\phi)}(t)$をみたす分布$\hat{F}_{n}^{(\phi)}$を構成する問題, (3) 打切りを受けたという条件のもとでの条件付平均生存時間の推定問題.

Key words: Censored data, Kaplan-Meier estimator, Parametric estimation, Product limit estimator
QRDA手法の応用性の評価 --- 悪臭の実験データへの適用 ---
齋藤堯幸:東京工業大学 大学院社会理工学研究科
斉藤幸子:生命工学工業技術研究所

尺度混在データに関する冗長性分析の手法(QRDA)が提案され,人工データを用いてその有効性は評価されているが,実際の現象解析に応用された例はない.QRDA手法の特徴は,ある変数セットが他の変数セットに従属する関係を分析し,かつ各変数セットが連続変量とカテゴリカル変量から成り立つことが特徴である.この研究では,その特徴を考慮し,臭気公害に関する実験データにQRDA手法を適用し,心理変数セットが物理変数セットに依存する従属関係を分析した.その結果QRDAは,従来の分析法よりも, 心理変数と物理変数の従属関係を明確に把握し,かつ潜在変量の個数を定めることが可能である点で,有用であることを,現実のデータ解析によって示した.

Key words: Data analysis, Mixed measurement levels, Reduced rank regression, Redundancy analysis, Sensory inspection data
DLLSA: Dynamic Link Library を用いた統計解析ライブラリ
竹内 光悦:鹿児島大学 理工学研究科 生命物質システム専攻 宿久 洋:鹿児島大学 理学部 数理情報科学科
山口 和範:立教大学 社会学部 産業関係学科
渡辺 美智子:東洋大学 経済学部 経済学科
浅野 長一郎:創価大学 工学部 情報システム科学科

近年, 統計解析のためのソフトウェア (以下, 統計ソフト) の開発が企業, 研究者等により盛んに行われている. その利用者についても, 一部の研究者, 実務者ばかりでなく, 学生をはじめ様々なレベルに広がっている. このような流れの中で, 統計ソフトに対する要望も多種多様であり, そのすべてを 1 つの統計ソフトで答えることは困難である.
本論文では, 入出力用のインターフェースと統計エンジンを 切り離すことにより, 多様な利用に対応できる統計解析ライブラリ (DLLSA: Dynamic Link Library for Statistical Analysis) の構築を 提案する. このライブラリは過去に様々な言語で開発された 統計ソフトを Dynamic Link Library (DLL) の形に変換したもので, DLL の特性により様々な利用が可能である. なお, DLLSA は http://www.sci.kagoshima-u.ac.jp/dllsa/ にて公開されており, 自由に利用できる状態である.

Key words: DLL, Statistical Software, World Wide Web
SAS LOGISTICを用いた条件付尤度によるロジスティック回帰の正確な推測
浜田知久馬:京都大学医学部薬剤疫学教室
岸本淳司:(株) SASインスティチュ−トジャパン

ロジスティック回帰の推測では, 現在では最尤法が標準的に用いられるようになっているが, 現実のデータ解析の場面では, 最尤推定の持つ漸近的な性質が成り立たない場面が多々ある. 1つの解決策は, あるパラメータについて推測を行う場合, 残りのパラメータの十分統計量を与えた下での条件付並べ替え分布に基づいた正確な推測を行うことである. SASではリリース8.1からロジスティック回帰においてこの正確な推測が可能になった. 正確な推測の概論と, 医薬分野における適用例を紹介する.



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